魅力的な芳香を放つ「金木犀(キンモクセイ)」の香り

今回は、魅力的な芳香を放つ、金木犀テーマとした香りです。

小さな金木犀の木と、古代中国の金木犀の伝説の物語となりました。

img12009

香りの名前

金木犀

香調

シングルフローラル

甘く華やかなキンモクセイの香り。

香りの制作について

制作No.279
2014年11月1日

香の具®使用本数 9本

 

金木犀(キンモクセイ)

原産:中国(中国では「桂花」→雅な花という意味)
時期:10~11月に黄・オレンジの花をつける常緑小高木
特徴:雌雄異株で、日本にある木は雄株のみ。
大気汚染に弱く、葉が汚れると花つきが悪くなる。
日本に来たのは、江戸時代。
学名:Osmanthus fragrans var. aurantiacus
(モクセイ属・芳香のある・橙黄色の)
Osmanthus(オスマンサス)とは、
ギリシャ語の「Osme(香り)+anthos(花)」

花言葉:謙遜、真実の愛、陶酔、初恋、変わらぬ魅力
→「謙遜」香りの素晴らしさに比べて花が控えめ

 

ima2009

 

1.

金木犀の香りに特別な想いを持つ人は多い。

その豊かな香りは、忘れかけていた思い出をふっと蘇らせてくれる力がある。(私の母は、金木犀の香りから子どもの頃の秋の運動会を思い出すらしい。)

金木犀のように特定の時期に決まって漂う芳香は、人々の心と記憶をつないでくれる不思議な安らぎとパワーがある。

 

植物たち(花)は、人間のように自分を卑下したり、他人をうらやんだりせず、きちんと自らの魅力を精一杯発揮してくれる。

そんな花たちが、自分の魅力を忘れてしまったとしたら、どうなるだろう・・・?

 

2.

ある春の日、一本の小さな木は悩んでいました。

「春になっても、ぼくには何の花も咲かない・・・」

そして満開の桜の木を眺めて言いました。

「桜さんはいいな、春にピンクの可愛い花が満開になって。すごく綺麗で素敵だな。」

それは、初恋にも似た憧れの気持ちでした。
淡く可憐な桜の花は、彼にはとても魅力的に見えました。

(桜)

 

3.

周囲に霧が立ち込めてきて、小さな木を覆いました。

その霧はどんどん濃くなっていき、小さな木はますます元気と自信を失っていきました。

 

4.

そんな時、桜の足もとで咲いていた黄色の花が、無邪気に話しかけてきました。

「やぁ!」

「・・・こんにちは。」小さな木は返事をしました。

「キミは元気がなさそうだね!」と、黄金色の花は笑いながら言いました。その花のオレンジがかった黄金色はとても元気そうで、その甘い芳香は、どこか親しみを感じさせました。

「あなたの花の色はとっても綺麗だね。ぼくはダメなんだ。こんなに気持ちの良い春の日なのに、何の花も咲かせられなくて・・・」

それを聞いた黄金色の花は、また笑って言いました。

「キミは、自分の本当の姿を、すっかり忘れてしまっているみたいだね。キミはどこか遠くの国からやって来たのかもしれないよ。」

そして意味深にこう言いました。

「もう少し月日が経って、月が僕のような黄金色に輝いた時、月に尋ねてみるといい―」

 

5.

小さな木は、月を見上げました。
春の夜空には、透明感のある明るく白い月が輝いています。

「あの花は、変なことを言うなぁ。」

そう思いながら、小さな木は「どこか遠くの国」という言葉が気になって、周囲に咲き誇る春の花々を眺めては、その美しさに魅了されました。

「もしかしたら、自分にもあんな綺麗な花が咲くのかもしれない」と、期待に胸を膨らませましたが、自分からはどんな花も咲くことはありませんでした。

 

6.

やがて季節は梅雨になり、透明な雨がたくさん降りました。

そして夏が来て、さわやかな風が吹き、小さな木の周りにあった霧を消しました。

霧が晴れたので、小さな木は思いきり伸びをしてみました。小さな木の葉は茂り、幹も枝も良く伸びて、大きく成長した自分を感じます。

しかし、まだ花の咲く様子はありません。小さな木はだんだん悲しくなってきました。

あっという間に夏も終わり、風はひんやりと肌寒くなりました。

 

7.

小さな木が悲しくて泣いていると、やがて静かな夜になりました。

闇が深まると、突然、空からキラキラと黄金色の光が降ってきました。光は木の周りに集まって、どんどん輝きを増していきます。

小さな木が空を見上げると、そこには黄金色に輝く月が、まんまるに満ちていました。

あの黄金色の花が言っていた、月です。

 

小さな木は、月に尋ねました。

「お月様、お月様。ぼくはどこから来たのでしょう・・・?ぼくには美しい花は咲かないのでしょうか?」

すると月は、鈴のような美しい声で答えました。

「あなたのまわりに集まった、光の粒を見てみてください」

 

小さな木は、言われたとおりに自分の体についた光の粒を見てみました。

目を凝らしてよく見ると、それは、オレンジ色に輝く小さな小さな花でした。

 

「その花は”金木犀”。それが、あなたの花ですよ。」

 

8.

小さな木は驚きました。

光が落ち着くと、自分の身体中にあの小さく可愛いオレンジ色の花が、いっぱいに咲いていたのです。

そしてあたりには何とも言えない甘く濃厚な良い香りが漂い、小さな木を包みました。

その香りは、眠っていた深い記憶を呼び覚ましました。

 

小さな木は、記憶の中で、
一瞬、青くて美しい惑星の姿を見ました。

 

「思い出しましたか?」

月は美しい声で言いました。

 

「あなたは昔、月に居たのです。」

 

9.

月の声は、古代中国に伝わる伝説を語ってくれました。

***

月には桂花(金木犀)の大木があり、秋に月がことさら美しく金色に輝くのは、金木犀が満開になるからなのです。

ある仲秋の名月の夜。

月には嫦娥(じょうが)という女神がいて、月の宮殿の窓辺にもたれて下界を見下ろしていました。

ちょうど、月の名所と言われる杭州あたりで、西湖の水面に金色のさざ波が立ち、えもいわれぬ美しさでした。

嫦娥は、思わず舞をはじめました。すると、そばにいた呉剛(ごこう)も浮かれて、花盛りの金木犀の幹を叩いて拍子を取りました。

金木犀からは、花や実が金のしずくのようにこぼれ落ちます。嫦娥は、地上の人々にもこの天上の花と芳香を分け与えたいと思い、花や実をぱらぱらと落としました。

そのおかげで、地上に金木犀が根付き、広く広まっていったのです・・・

***

 

小さな木は、月にいた頃の記憶を取り戻しました。

そして、春に咲く花にばかり憧れ、自分の魅力をすっかり見失っていたことに気がつきました。

 

同時に、あることを不思議に思い、月に尋ねます。

「嫦娥は、自らが美しい月にいるのに、なぜ地上の月見の名所に心打たれたのでしょう?」それはまるでさっきまでの自分のようです。

 

月は答えました。

***

嫦娥には、地上に残してきた后羿(げい)という夫がいました。

嫦娥と夫は、地上に住んでいた際、不死の力を失ってしまいました。

夫は二人のために、元通りになる薬を探してきました。

その薬は、二人で飲めば不死の力を取り戻すことができ、一人で飲めば、天上へ還ることができるというものでした。

 

それを知った嫦娥は、天上へ還りたいと願うあまり、夫の目を盗み、一人で全て飲んでしまいました。しかし、嫦娥は、夫を裏切ってしまった罪悪感から、天上へ帰る途中の月にとどまりました。

 

地上に残された后羿は、離れ離れになった嫦娥をより近くで感じることができるよう、月に向かって供え物をしました。

これがお月見の始まりです。

 

***

嫦娥が下界の月の名所の美しさを見て心を打たれたのは、消えてしまったと思われた真実の愛が、まだわずかに残されていると感じたからなのでしょう。

 

金木犀の豊かな芳香が、そのことを思い起こしてくれました。

 

10.

嫦娥が地上へ送った花と香りは、消えることのない真実の愛の証です。この香りが満開になる頃には、仲秋の名月、一年で一番美しい月が輝きます。

その天上の芳香は、変わらぬ愛の思い出を呼びがえらせてくれる力を持ちました。

 

11.

すべてを思い出した金木犀の小さな木は、もう他の花をうらやむことをやめ、自分がもつ変わらぬ魅力を取り戻しました。

そして毎年、仲秋の名月が輝く季節になると、豊かな芳香を放って、多くの人々を魅了しました。

 

12.

金木犀の小さな木は、その後も相変わらず謙虚でした。

しかし、人々が自分自身の魅力に気づかず悩んでいるのを見るたび、「変わらぬ魅力」と「真実の愛」を思い起こさせる天上の方向で、その人たちを優しく優しく包み込むのでした。

おわり

 

**

※とりあえず物語だけアップしました。今日、なんとなくこの金木犀の香りのイメージをアップしようかなと思っていたら、ちょうどニュース番組で、中国の月面探査機「嫦娥」が出ていてシンクロだったので。(笑)

私のキンモクセイの香水はまだ商品化してないので、こちらの練り香水をおすすめします♪かわいい!